ちょっと危険なバタコ
アンパンマンとばいきんまんがこの星に来て、おそらく一番喜んでいたのは・・・・・・
自らの趣味の為、よからぬことを考えている人物が1人存在していた。平和なアンパンマンワールドを脅かすかもしれない人・・・しかし、その事に気付く者はまだいない。
「アンパンマンとばいきんまん・・・正義の味方と悪いやつがいるんだから、もっとらしくなった方がいいわよね」
彼女の頭の中は、よからぬ妄想がいっぱい。そして、くしくも彼女の妄想を実現するだけの材料も揃えることができたのだ。
「アンパンマンとしょくぱんまんとカレーパンマンの3人で戦隊作って・・・・・・何か乗り物も必要よね。ジャムおじさんに頼んでおこう」
彼女〜バタコは、戦隊ものマニアなのかもしれない。
「ねぇ、ジャムおじさん」
「なんだい?バタコ」
「あのね、みんなで移動できる乗り物とかあったら、便利じゃない?」
「そうだね。何か作ってみよう」
メカニック(?)ジャムおじさんは、バタコの趣味に気付かずにそう言った。
ジャムおじさんがバタコに騙されて(笑)作業室にこもった後、誰もいないハズのパン工場の中で、バタコは、はっきりとこう言った。
「まったく、ばいきんまんって悪さをするのに向いてないんじゃないかしら。いつもつめが甘いのよね〜」
わざとらしい程大きなため息をつきながら。誰もいないハズなのに、あたかも誰かに聞かせるように・・・・・・
その頃、バイキン城のモニタールーム。 モニターの前に座っているばいきんまんは、一心に画面を凝視していた。
画面に映し出されているのは、パン工場の様子。偵察の為、小型カメラ内臓の小さなマシンを放っていたのだ。もちろん、音声もバッチリ。
「くそ〜〜〜〜!!バタコのやつ、好き勝手言いやがって(怒)よし、今度こそ・・・」
何やら作戦を練り始めたばいきんまん。
「・・・これでどうだ!う〜ん完璧。早速メカを作って・・・」
こうして、まんまとバタコに乗せられたばいきんまん。バタコの思惑は、順調に進んで行くのだった。
「やっぱり、戦隊って言ったら5人組みよね。それに、女の子が1人いなくちゃ」
そんな計画を知らずに、ある日メロンパンナちゃんを作らされたジャムおじさん。純粋に、女の子タイプのアンパンマンの仲間を作ったハズなのに、戦隊計画に組み込まれてしまったことは、ジャムおじさんも当人のメロンパンナちゃんも気付かない。
「次は戦闘タイプで、寡黙なキャラがいいわよね。衣装は黒っぽくて、何か暗い過去があったり・・・」
バタコの計画では男の子の予定だったのに、メロンパンナちゃんの「お姉ちゃんが欲しい」発言のせいで女の子を作ることに決めたジャムおじさん。仕方が無いので、暗い過去という設定の為に、なんとかバイキン草のエキスを入れさせるように(ばいきんまんサイドを)仕向け、バタコは満足していた。
正義と悪、両方の黒幕が同じ人物だとは、誰も気付かない。
言葉たくみにそそのかし、自分の計画に限りなく近づけようとするバタコ。その手は、もちろん飼い犬にまでおよんでいく。
「いい?チーズ。もし私たちがピンチになったら、あなたの力が必要になるわ」
「アンアン」
「だから、アンパンマン号の操縦方法やパンの焼き方・・・他にも色々覚えてね」
相手はただの犬なのに、かなりの無茶を強いている。しかし、
「アン」
まかせとけ、とばかりに答えるチーズ。最早、犬の範疇をこえている。
チーズは並々ならぬ努力の結果、人並み以上の能力を持った、まさしく『名犬』になっていった。
このさい、犬のこねたパン生地に対する不安は忘れて欲しい。
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